搾りたての生乳と旬の素材で作るフレッシュなジェラート

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「農業生産法人 有限会社ドリームヒル」(以下ドリームヒル)は、1,000haを超える広大な敷地を所有し、2,300頭を越える牛の搾乳を行い、1日8万リットルもの牛乳を生産する全国でも有数のギガファームです。2012年から搾りたての生乳をベースにしたアイスクリーム作りに取り組み、翌年ふるさと納税の返礼品となったことで大きく注目されました。2017年にジェラートや洋菓子を扱う「ドリームドルチェ」、2019年には同じ敷地内に自社の黒毛和牛の料理も提供するカフェレストラン「ドリームラッテ」をオープン。今回は、同社の特徴や今後の目標を代表取締役の小椋幸男さんに、ジェラートへのこだわりについてジェラート職人の岸本友之さんにお話をうかがいました。


4軒の農家で始めた牧場が全国有数のギガファームに
「ドリームヒル」は、周辺4軒の酪農家が集まって2003年に設立されました。「離農跡地などの遊休農地を活用し、雇用を創出できるような地域貢献型の大きな牧場を目指しました」と小椋代表は振り返ります。従業員たちと協力し合って頑張るうちに、出荷乳量は2004年から13年連続で全道1位を記録。全国でも有数のギガファームとなりました。


「牧場を大きくするには、牛の健康に配慮して飼育することが大事です」と同ファームでは、牛たちが毎日食べる飼料にこだわります。「気候に左右される飼料の質や栄養価を保つために重要なのは、一番よい時期に飼料となるデントコーンや牧草を収穫すること」と言い、貯蔵設備や機械への投資を惜しまず、同時期に大量に収穫される飼料を保管するため、大規模な貯蔵施設バンカーサイロを整備。一番栄養価の高い時期に収穫する体制を完璧に整えました。

さらに、国内では数少ないアメリカ製のロータリーパーラーを2基導入。機械化することでスピーディーに搾乳でき、牛にストレスがかからないだけでなく、従業員の負担も減らし、牛にも人にもやさしい牧場運営を実践しています。


小さなアイスクリーム工房から本格的なジェラートショップへ
ロータリーパーラーで一度に搾乳できるのは50頭。1回の搾乳を終えるまで6時間もかかるとのこと。これを1日3回、従業員が交代しながら行っています。そうした従業員の仕事の流れを見て、社長の奥様の祐子さんは「作業の合間に、従業員がきちんと食事できるよう社員食堂を作りたい」と考え、さらにどうせ作るなら2階建てにして「牧場産ミルクを使ったアイスクリームを作るスペースも設けてほしい」と提案しました。もともと祐子さんはスイーツの教室や講習会に通って勉強しており、いずれはアイスクリーム作りに取り組みたいと考えていたそうです。

念願かなって2012年に、アイスクリームの工房が稼働し始めます。ほどなく、町のほうから「ふるさと納税の返礼品として出してみませんか」と打診があり、翌年から参加することになりました。「思った以上に評判がよく、テレビ番組で紹介されたことからさらに販売数が増えました」と小椋代表は目を細めます。2016年5月には新たにアイスクリーム工場を建設。量産体制に入りました。

その後も祐子さんは味の研究を続け、町内に「ドリームドルチェ」を開くに至り、ジェラート職人を招き入れることに。「ドリームドルチェ」は2017年にオープン。常時16種類以上のフレーバーを揃える本格的なジェラートショップとなりました。


顔の見える仕入れにこだわり旬の素材を生かすフレーバー
「ドリームドルチェ」の立ち上げから関わり、次々と季節ごとのフレーバーを生み出してきたのが、ジェラート職人の岸本友之さんです。

岸本さんは大阪出身で、地元や神戸で7~8年、洋菓子店でパティシエとして働いていました。その後、東京で調理用機器を扱う会社に入社し、機械の使い方や美味しいものの作り方のコンサルティングを担当。全国を巡る中で、帯広でデモンストレーションを行った際に、奥様の祐子さんから声をかけられて「ドリームドルチェ」のオープン当初から関わることになったのです。

以前から岸本さんは、食材の味がダイレクトに反映されるジェラートに魅力を感じていて、「牧場のミルクを使い、生産者さんから直接仕入れる旬の素材を使えば、今までにないものが作れるのでは」という期待が膨らみました。素材のチョイスには、これまでに味わったもの、出会った人などすべての経験が生かされていると言い、今でも休みの日には各地の生産者さんを訪ねているそうです。「パクチー、アスパラ、長イモ、シーベリーなど季節ごとに上士幌町や十勝管内、道内の素材を中心に、全国の美味しい素材も取り入れています。それぞれの素材がどんなふうに作られているのかを実際に見て、話を聞くことで、新しいフレーバーのイマジネーションが湧いてきますね」と岸本さん。これから誕生する新たなフレーバーが楽しみですね。


美味しさを広めるためジェラート大会へチャレンジ!
「ドリームドルチェ」のジェラートの美味しさの原点は搾りたてのミルクです。「しかも普通はポンプを何回も通しますが、搾乳機から保冷するバルククーラーへ移す時に1回ポンプを通すだけ。直接バルククーラーから抜いて原料として使用するため、ミルクの風味が落ちず、美味しいジェラートが生まれます」と小椋代表は大きな自信を見せます。「自社ミルクを使ったジェラートをもっと多くの人に知ってほしい」そんな思いから、全国のジェラート職人が集まり、味やオリジナリティなどを競う「ジェラートワールドツアージャパン2019 横浜」に挑戦することになりました。

同社の期待を背負って挑んだ岸本さんは、4月の予選会を見事に突破し、ファイナリスト11人に残ります。「自分の表現の限界に挑みました」という作品は「ライム&黒ほうじ茶のチョコレートジェラート」。ライムが香る爽やかでマイルドなチョコ味が口の中に広がった後に、黒ほうじ茶の香ばしい風味が漂う、確かな技を感じる味わいでした。

会場では審査員とは別に、一般のお客様もテイスティングして投票する仕組みです。会期2日間で約2万人ものお客様が来場し、思い思いに好みのジェラートを堪能しました。その中で「上士幌のドリームドルチェに行ったことがあります」「ふるさと納税の返礼品でジェラートを選んで、食べてみて美味しかったです」など、お客様の生の声を聞けたことは、今後への大きな励みとなりました。

大会では残念ながら入賞を逃しましたが、ジェラートの美味しさは多くの人に届いたに違いありません。また、酪農王国十勝の中で先陣を切って大会に出ることで、「『頑張ってるな、次は自分たちも出るか』と酪農家たちが感じ、相乗効果が生まれれば嬉しいですね」と、これからの可能性に思いを馳せる岸本さんでした。


自家栽培のフルーツ、黒毛和牛のステーキも楽しんで
「ドリームヒル」は、牛のふん尿を発酵させ、自社単独のバイオガス発電設備で電気を生み出す、環境にもやさしい循環型農業を実践しています。2019年からは、その際に出る余剰熱を利用し、ビニールハウスでイチゴやブドウの栽培も始めました。フルーツは「ドリームドルチェ」でも使われる予定で、冬に最盛期を迎えるというイチゴはクリスマス等イベント時にも重宝しそうです。

「ふるさと納税の返礼品となったおかげで、ジェラートは好評です。リピーターのお客様が増えるなど、手応えを感じています。ジェラートをきっかけに上士幌町へ多くの方に足を運んでもらい、自慢の黒毛和牛のステーキや、自社栽培のフルーツを使ったスイーツなども楽しんでいただきたいですね。そして、牧場を拡大することで雇用を創出したいと思っています」と小椋代表。創業当初の思いを忘れずに、今後も地域に貢献できるギガファームとして、さらなる発展を目指します。